サッカーのプロを目指してオーストラリアから来ました
English → He came all the way from Australia to become a professional in football (Part 5)
外国人がなんとなく日本にやってきても、いろんな事情で、本当にどうしようもないことがあります。問題を解決するのに気が遠くなるほど時間がかかるのです。
事前によく調べて、準備して来日する方が安全です。
特に、日本語の勉強は必須です。
しかし、彼は、全くの予備知識もなく、語学の準備もしないでふらりと日本にやってきてしまいました。
そんな事例として、今回は、オーストラリアの山岳地帯の田舎町から、サッカーのプロを目指したいという18歳の青年のケースをご紹介いたします。
え!サッカーのプロになりたいの?
日本でサッカーのプロになりたいの???
普通の考え方だと、母国のサッカーチームもしくはサッカークラブに入り、その国でサッカーのプロフッショナルを目指して頑張るのですが、彼の場合はなぜか違うようです。
オーストリアの山岳学校を卒業した影響でしょうか、ほとんどオーストリア英語が聞き取れません。
じっくりと時間をかけてパズルを解きほぐしていくと、アボリジニの血が流れていることが判りました。
さらに、筆談でも難しいということがわかってきました。これは正規の英語にスラングや方言などが混じっているためです。さらに、スペイン語も入っていたのです。
コミュニケーションの命の綱が「英語」という言語なのですが・・・。
彼が日本で生きていくためになんとかしなければなりません。
唯一の取り得が18歳という若さです。
日本を選んだ理由として、島国で静かで四季があり、戦争もなく温暖気候で過ごしやすいからだそうです。
日本で生活するという割には、少し焦点がはっきりとしていませんね。
当市役所では3種類の「日本語教室」をそれぞれ週2回開催しています
講師はみんなボランテイアですが、開催する場所やテキストは市が無償で提供しています。
これは、来日した外国人のためというよりも、最初はいろんな事情で中学校はもちろん小学校へもいけなかった人たちのために開講したものです。
そのため老人が多いです。
しかし、近年は、なぜか若い人達も増えてきたのです。これは、小学校でいじめやけが、病気、引きこもり、貧しさなどで充分に小学校に行けなかった人たちがいるからです。そして、当然外国人も多く通っています。
中学校へ行けなかった人たちには、日本では「夜間中学」が準備されていますが、小学校対象の場合はないので、地方行政上どうしてもこのような「日本語教室」は最低必要なのです。
ひらがな教室
ひらがな、カタカナ、数字などの読み方、発音練習、書き方、聞き方などが中心です。生活するうえで最小限の日常会話ができるように指導しています。
毎週月曜日と木曜日の夜です。1コマ1時間半です。
日曜日は補習で、朝の部があり、復習と質問などが中心ですが、なぜかいつもいっぱいです。
漢字入門教室
小学校1~3年で習う漢字450種類などが中心で、読み。書き、聞く、話すを学びます。
毎週火曜日と金曜日の夜です。1コマ1時間半です。
日曜日は補習で、昼の部があり、復習と質問などが中心ですが、なぜかいつもいっぱいです。
これはなぜでしょうか。不思議な現象ですね!
小学校1年生では、一・・・・・・・・などを習うのですが、漢字の読み方が、「音読み」と「訓読み」があり、受講生を悩ますそうです。
音読みとは、昔の中国の発音をもとにした読みで、訓読みとは、漢字の意味を表す日本語の読みです。
例えば、漢字の「雨」の音読みは、「う」で、訓読みは「あめ」です。
だから、日本人は「折衷」ということが好きなのです。民族の生きる知恵でもあるのですが。
漢字習得教室
小学校4~6年で習う漢字500種類などが中心です。毎週水曜日と土曜日の夜です。1コマ1時間半です。日曜日は補習で、夜の部があり、復習と質問などが中心ですが、なぜかいつもいっぱいです。教室に入りきらず、廊下で立ったままで、あるいは外で授業をまじめに聞いています。
3ケ月間でカリキュラムが終了し、受講者には市の外郭団体が発行する「修了証書」が手渡されます。
外国人にはこの修了証書が非常に大事で、就職のときに雇い主が必ずチェックするからです。(ただ、これは正規のものでなく、あくまでも参考資料としてです。)
青年への支援
(1) 日本語の手ほどきと当市での就職口の探索
彼は経済的な事情もあり、3ケ月間で3つの教室に参加して、勉強することになりました。
3ケ月後に三枚の修了書を手にしたのですが、彼は必死で日本語を勉強したのでしょうか。残念ながら当市では適切な就職先はありませんでした。
日本語がまったく話せないからです。
来年2020年の4月から全国一斉に小学校5年と6年で英語教育が開始されるので、正常な英語が話せていたら塾などへの道があったと思います。
英語であって英語でないのですから、この日本では難しいのです。
(2) 日本のサッカー業界への紹介
日本のプロサッカーは、ピラミッド型構造をしていて、J1、J2、J3とあり、その底辺にあるのがJ3チームです。
テレビなどに登場することはめったにありません。
J3チームの中で、遠く離れた地方でしたが、ホームグラウンドの整備と通訳の募集があったので、「外国人支援室」の紹介状兼推薦状を彼に渡して、近くの駅で見送りました。
(3)当市を去るにあたってお土産とも言えるアドバイス
A) 約1000近い漢字を覚えなさい
日本の小学生が使う漢字ですから、先ず読めて、書けるように自分で勉強しなさい。
それがきっと役に立つときが必ずくるでしょう。
過去を振り返ることよりも、前を向いて自分自身を信用しなさい。
B) 原因と結果の法則
よいことであれ、悪いことであれ、起こった結果には必ず原因があります。
反省も時には必要です。
起きた結果を原因にして、次の結果を予測したり、予想したりできます。予測や予想した結果と実際の結果が違っていたら、両者の差異を考えたり、原因を考察することができます。
そして、また新しい結果を導くこともできます。
慌てないで、じっくりと自分の人生を歩んでください。
C) 地域との接点
困ったときに助けてくれるのが、友人であり、地域の人たちです。
一人だと孤立してしまいます。すると、良からぬことを考えるから「孤立」は、避けなければいけません。
地域との何らかの触れ合いが重要になります。
例えば、地域の人たちと週に1回程度、「地域サッカーチーム」などを結成して活動すると良いですよ。
こういう地味なことがじわりと効いてきます。あわてないことです。
そして、あきらめないことです。きっと何かいいことがあります。
人はあなたの姿をよく見ています。みんなよく観察していますよ。
おわりに
彼が当市を去ってから1年程経過したでしょうか。彼から日本語によるたどたどしい手紙が当支援室に届きました。
「無事J3チームに入れて、グランドキーパーと通訳をしています。どうしても正確な通訳が必要な時は紙に「漢字」を書いてがんばっています。休みには地域の人とサッカーをして遊んでいます。また、休みのときは、町のスポーツ店の手伝いにも行っています。」
「もらったテキストが評判でひっぱりだこです。お蔭でもうボロボロになりましたが!」
よかったですね、これで一安心です。やれやれ!!
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