彼は「日本の林業作業員」の求人に応じてフィンランドから来日しました・・・

目的を明確にして来日される外国人も結構おられますが、今回紹介するように、目的らしい目的も持たず余り深く考えないで日本にこられる外人さんもおられます。

彼は、フィンランドのパルプ会社に勤めていましたが、日本の林業作業員の募集に応じて来日しました。フィンランドでは小学3年生から英語の授業始まるので、彼はフィンランド語と英語を話せます。

しかし、日本語はフィンランドで何の研修も受けていないので、日本語はまったく話せません。

無謀とも思える来日である。

もし外国人が英語を話せると、作業中心の労働ではなく知的労働であれば、いろいろな制約条件はあるものの働ける職場は日本にあります。

☆外国人のみなさん、日本で就職して働くためには「日本語レベル3以上」ないと仕事(作業労働)が難しいですよ。

挨拶や日常会話程度では仕事でのコミュニケーションがとれないですよ。

せめて5W1Hぐらいは話せてまた聞きとれないといけません。ここで5W1Hとは、What、Why、Who、When、Where、Howのことです。

背景

フィンランドの林業は2つに分類され、化学林業(製紙とパルプ業)では紙、ボール紙、パルプを製造し、機械林業(製材、旋盤加工、合板接着)では木製の商品を製造している。彼はパルプ会社の漂白工程で働いていたようである。

そのパルプ会社から日本での林業作業員の募集情報を得たようです。

どんな仕事がしたいですか? 現地で働けますか?

びっくりしたのは彼には何の職業に就くのか、どんなことをするのか判らないのである。英語で「林業作業員」としか答えが返ってこない。彼は余り考えていない様子であった。
就職先に業務内容を問い合わせたところ、木材の電動ノコギリによる伐採や搬出、木の枝の切断や周りの芝刈り作業、森の監視作業やパトロールなどであった。

日本の山は現在荒れ放題の状況が多く、これを少しでも整備していくというのである。

日本語がわからないと仕事ができないので、外国人支援の立場から最低限の日本語教育をすべきだろう。
就職先の要望としては、明日からでもすぐ現地で働いてほしいという要望であったが、日本語がまったくできないので無理だろうということを伝えると、1週間待ちましょうとの返事であった。
なんとか交渉の結果、1ケ月間の日本語教育準備期間を確保した。
また、問題が発生した。彼は持ち金が少ないというのだ。止む無く、市の官舎の空き部屋を安く提供した。

☆外国人のみなさん、せめて半年間はなんとか生活できるだけのお金は最低源必要ですよ。これは日本語研修期間や職に就いて安定するまでの期間です。

当外国人支援室の対応

彼は日本語をまったく話せないので、この1ケ月間かけて日本語の入門と勉強の仕方を教えた。

「ひらがな教室」、「漢字入門教室」のレベルはマスターできるように厳しく教育した。
また、地域とのコミュニケーションの重要性も説得した。

これは困った時に助けてもらうためである。
1ケ月後に彼の日本語レベルをチェックした結果、残念な

結果ではあるがレベル2であった。これでは、仕事におけるコミュニケーションの不安が残る。

彼には、仕事をしながら日本語を独学でもいいから勉強するように強く勧めた。

新天地「森林管理会社」での彼の仕事ぶり

「森林管理会社」での彼の作業に関して、初日に日本語の資料を渡されたがまったくわからなかった。彼に関する受け入れの教育管理プログラムがないのである。

日本で働くには、日本語の理解が必須なのである。

日本語が判らないと日本では働けないのである。懇切丁寧に日本語を教えてくれる事業者は少ない。そういう面では厳しいと言える。日本の中小企業では作業マニュアルや操作標準書などがないことが多い。ましてや英語版等はないと考えるのが普通である。

一方、大企業では、マニュアルなどもあり当然、英語化されている。

彼は翌日から現地で、木材の電動ノコギリによる枯れ木の伐採や搬出作業、木の上方にローをプ使って登って木の枝の切断作業、周りの芝刈り作業と整理、森の監視作業やパトロールなどを先輩について実習を行った。
実習と言っても、先輩が行う作業を見よう見まねで覚えるだけである。しかし、これらの作業は先輩と一緒に作業した時はなんとかこなせたが、一人では作業できなかった。
彼が苦手とした作業は、電動ノコギリの取り扱い方(いろんなタイプがあり、どれも扱い方が異なる)、木材の搬出方法(日本独自の方法でよく判らなかった)、木に登って枝を切断するのであるがロープを使っての木の登り方、芝刈り作業後の芝の整理、森の監視作業やパトロールなどであった。
「原因と結果の法則」というのがあり、作業一つ一つについてその作業の目的と結果についての説明があれば、少しは彼も理解できたかもしれない。日本の一次産業である、農業、漁業、林業に共通するのは昔ながらのやり方や考え方が今も残っており、踏襲されていることである。彼の日本語レベルがせめて3レベル以上ならもう少し様子が違ったかもしれない。それと、彼はこういう作業をフィンランドでまったく見たこともないし経験も皆無だったらしい。

こういったことも次の事故に影響したのであろう。

突然に彼を襲った事故

☆彼の皮膚へのかぶれや接触傷の悪化

山地での作業なので、彼は木材の樹脂液の付着、木の葉や植物の葉の先端による皮膚との接触に伴う傷、漆などの液に10日間ほどでかぶれてしまったのだ。皮膚がぼこぼこに膨れ上がった。そうなると歩けなくなり作業できなくなる。普通の人でも山で作業するとこのような状況に遭遇するが、3ケ月もすると免疫ができて、平気で作業できるようになる。しかし、彼の場合は重症であった。

☆雨上がり直後の作業でのすべりによる足の負傷

山の傾斜面の木材運送作業で、彼はうっかり切株に足を引っ掛けて15mほど下方に滑ってしまった。

その結果彼の足は打撲傷で1週間歩けなくなってしまった。

雨上がりの作業には注意するように先輩から何度も注意があったという。彼は日本語が充分判らなかった可能性が高い。

そんな訳で、彼は「森林管理会社」にきて1ケ月も経たずに働けなくなったのである。

森林管理会社の責任者から相談の電話があった。内は中小企業なのでこれ以上面倒みきれないという内容であった。

彼の新しい就職先探し

脚の傷と皮膚のかぶれが癒えたころに(正規の社員ではないので、就労の保証は1ケ月単位である。初年度は見習い社員の扱い)、彼からの要望もあり、「森林管理会社」で彼と面談した。
目的は次の就職先を探すためであった。日本語を充分話すことができず、しかも人とのコミュニケーションが不十分な外国人の働く場所は見つかるだろうか。ありました!
建設工事現場の「警備員」である。

「警備員」という仕事

建設工事現場の「警備員」は、朝から晩まで立ちっ放しの職場である。夏は40℃を超えることもあり、逆に冬は雪がちらつく中での仕事である。常時ヘルメットを着用していなければならないので、厳しい環境にある職場である。
ただ、話す言葉は少ないのであるが、常に危険を伴うので安全に対する意識は必須である。
言葉の事例;「気を付けて通ってください」、「右側を歩いてください」、「バックバック!オーライ!」、「ここから先は通れません」、「足元に注意してください」などなど。
そんな訳で、彼の体を「健康診断」でチェック後、警備員会社に就職が決まった。よかったですね。
半年間は見習いの処遇であった。

夜間も働くという困難さ

彼は早速、警備員会社で3日間の研修を受けて建設工事現場の仕事に就いた。この仕事簡単そうに見えますが。派遣された現場が1日~1年間という期間の不規則性があるのが特徴である。しかも夜間勤務もある。特に夜間は人との応対は少なくなるものの、安全に対するケアを十分に行う必要がある。夜間勤務は昼間に休憩や睡眠を取らねばならず、特に夏場は厳しいと言える。

彼へのアドバイス

☆どんな職場で働こうが次の3つの状態に常に気を配るようにアドバイスした。普段から準備が必要である。
【定常状態】生活や業務で通常起きていること。できるだけいろんな経験を積むように!
【非定常状態】普段は余り起こらない些細な事項。電話への応対、風邪を引いた時や体調不良の時の対応など。
【緊急状態】火災や大事故や大きなけがへの対応。

☆日本語の勉強を継続すること。特に日本語レベル3以上になること。復習が大事ですよ。何十回も繰り返すことです。きっと道が開けてきます。

おわりに

このようにして、彼は何とか建設工事現場の「警備員」に自分の居場所を見つけたのである。それから数年して、彼は英語が話せることを生かして、建設工事現場の「警備員」の業務マニュアルなどを英語化したという。日本語を真面目に勉強した結果が出てきましたね、よかったですね!!

その後、「警備員」の外国人数も少しずつ増えて行ったという。

 

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