勝ち組企業は知っている?外国人マネジメントの秘訣

総務省の調査によれば、「生産年齢人口」(15~64歳までの人口)は、2015年に 7,592万人ですが、2030年には 6,773万人になるといわれており、さらに20年後の2050年には、 5,001万人にまで減少するといわれています。

人口が減少すれば、経済にはマイナスの影響が出ます。

日本が現在の経済力を維持するためには、何らかの方法で労働人口を維持するか、生産性の向上によって人口の減少分を補う必要に迫られるでしょう。

労働人口を維持する方法として、外国人人材の受け入れがあり、現状、日本で働き、活躍している外国人は 130万人以上にのぼっています。

 

日本は島国で、どの地域でも日本語が通じます。

結果として、同質性が高く、チームワークを育みやすい部分があります。日本人同士であれば、「阿吽の呼吸」や「暗黙の了解」で仕事が進められる部分も多々あるでしょう。

今後、多くの企業でこれまで以上に外国人を採用したり、何らかのプロジェクトを共同していくことが増えるはずです。

しかし、生まれ育った環境も、言葉も違う外国人と一緒に仕事をする場合には阿吽の呼吸や暗黙の了解は通用しません。

彼ら・彼女らの価値観や考え方を理解して、コミュニケーションをとる必要があります。

この記事では、今後、一緒に働く外国人の価値観や考え方を理解するためのヒントとして「メンタルイメージ」について解説します。

:目次:
・メンタルイメージとは何か?
6つのメンタルイメージ
6つのメンタルイメージ別マネジメント方法
まとめ

メンタルイメージとは何か?

「メンタルイメージ」とは、組織人類学者のへールト・ホフステード博士が以下の6つの課題を指標化して「文化の違い」として数値化、各国の文化を分類したものです。

1.権力格差(小さい⇔大きい)
※階層をどの程度重視するか?の指標です。小さいほど平等公平を重視。大きいほど階層の力が強く働きます。
2.集団主義 ⇔ 個人主義
3.女性性(生活の質)⇔ 男性性(達成)
※家族や友人などと一緒にいる時間を重視するか、目標達成、成功、地位を得ることを重視するか?
4.不確実性の回避(低い⇔高い)
※不確実なことや曖昧なことを脅威ととらえるか、あまり気にしないのか?
5.短期志向 ⇔ 長期思考
※どの程度の時間軸で物事をとらえるか
6.人生の楽しみ方(抑制的⇔充足的)
※人生を楽しみたい楽をしたいという気持ちを抑制するか、充足させるか?

各パラメータの分布によって、価値感や考え方が異なってきます。

へールト・ホフステード博士(Geert Hofstede 1928~)は、オランダの社会人類学者で、経済学者のマルクスに次いで論文への引用が多い「組織における文化心理学」で世界的に最も有名な学者です。

2008年にはウォール・ストリート・ジャーナルで「世界で最も影響力のあるビジネス思想家トップ20」に選ばれた人物でもあります。

6つのメンタルイメージ

課題ごとのパラメータの分布によってホフステード博士は、各国の文化(人々)を以下の6つの傾向に分類しています。

1.コンテスト
(競争「勝者がすべてを手に入れる」)
競争での格差が少ないアングロサクソン諸国の文化。個人主義と男性性が強く、不確実性の回避スコアが低い。
例:アメリカ、イギリス、アイルランド、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド
コンテスト型人材に適したリーダーシップ法

2.ネットワーク
(個々人が独立しつつ、つながりあって関係している)
北欧諸国やオランダのように権力格差が低く、個人主義が強く、女性性の強い社会。全員が意思決定に関わる。
例:オランダ、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、アイスランド
コンテスト型人材に適したリーダーシップ法

3.油の効いた機械
(秩序を重視するオーガナイザー)
権力格差が小さく、個人主義で、不確実性の回避傾向が強い。手続きや規則を重視する、階層的圧力は効かない。
例:ドイツ、オーストリア、チェコ、ハンガリー、ドイツ語圏スイス
油の効いた機械型人材に適したリーダーシップ法

4.人間のピラミッド
(忠誠、階層、内部秩序)
権力格差が大きく集団主義で、不確実性の回避傾向が高い社会。家父長的で強力なリーダーシップの決定に部下は従う。一方プロセスの構造化も必要なので、変革には時間がかかる。
例:中南米諸国(アルゼンチン、コスタリカを除く)、アフリカ諸国、中東諸国、ポルトガル、ギリシャ、ロシア、スロバキア、南イタリア、トルコ、タイ、韓国
人間のピラミッド型人材に適したリーダーシップ法

5.太陽系
(階層と個人主義のパラドックス)
権力格差が大きく、不確実性が強く、個人主義。
例:フランス、ベルギー、北部イタリア、フランス語圏スイス、一部スペイン、ポーランド、アルゼンチン
人間のピラミッド型人材に適したリーダーシップ法

6.家族
(階層と忠誠、フレキシビリティ)
権力格差が大きく、集団主義で、不確実性の回避が低い。家父長的で強力なリーダーの決定に部下は柔軟に従う。
例:中国、香港、シンガポール、ベトナム、インドネシア、マレーシア、インド
人間のピラミッド型人材に適したリーダーシップ法

※上記6つの分類は、宮森千嘉子・宮林隆吉『経営戦略としての異文化適応力』より引用

上記、1~6の傾向を見てもわかるように、集団と個人の関係性や、自分たちのリーダーに対しての考え方、どの程度の不確実性を許容するか?などなど、各国で価値観の違いがあります。

上記の6つの分類に日本が含まれていないのは?
→日本の文化が持つ傾向はそのどれにも属さないからです。

6つのメンタルイメージ別・リーダーシップの在り方

文化の傾向ごとに、リーダーに求められるスタンスは異なります。以下、6つの傾向ごとに求められる「リーダーシップの在り方」について解説します。

1.「コンテスト型」人材に求められるリーダーシップ法
・良識に優れ、決定力があること
・チームの業績を組織内に売り込む力がある
・部下と目的を共有しコミットしたら、やり方は任せる
・ポジティブなフィードバックとコーチングを行う

2.「ネットワーク型」人材に求められるリーダーシップ法
・相談型、支援型
・すべての人に対する公平性
・責任範囲の明確化。権限移譲。やりがいの創出。
・同僚のような感覚で付き合える親近感
・リーダーの決定力は他の手段がない時のみ求められる

3.「油の効いた機械型」人材に求められるリーダーシップ法
・リーダーがその分野の専門家であること
・部下の専門性の尊重、役割分担の明確化
・仕事全体のフローを決定したうえで部下に仕事を任せる。
・部下が課題に直面した場合は、解決に向けて方向性を示せる人

4.「人間のピラミッド型」人材に求められるリーダーシップ法
・部下から畏怖の念を持たれる家父長型のリーダー
・社内外に強い影響力とネットワークを持つ
・明確な指示を出し、進捗を定期的に管理する
・厳格さと愛情を併せ持ち、部下の仕事・プライベート両面の幸福を自分の責任ととらえる

5.「太陽系型」人材に求められるリーダーシップ法
・家父長的でカリスマ性がある
・極めて知性的
・雄弁で部下に明確な方向性を示せる
・部下とは距離があるが、「見守っている」というメッセージを与える
・ノーブレス・オブリージュ

6.「家族型」人材に求められるリーダーシップ法
・畏怖の念を抱かせる、家父長的リーダー
・明確な指示、管理監督、アドバイス
・部下ごとの能力に応じた具体的な目標設定、責任範囲の明確化、権限移譲
・時にはプレッシャーをかけて組織を牽引する
・厳格さと愛情を併せ持ち、部下の仕事・プライベート両面の幸福を自分の責任ととらえる

メンタルイメージごとに求められているリーダーシップの在り方が大きく違うことがわかります。

まとめ:大切なのはスタッフの考えに関心を持つこと

今回は、「勝ち組企業は知っている?外国人マネジメントの秘訣」というテーマでお話してきました。

すでに日本で働いている外国人は130万人以上に上ります。さまざまなところで、外国人労働者が活躍しています。今後、外国人を部下としてマネジメントする場面も増えてくるでしょう。

しかし、各国の文化傾向によってバリエーションに富んだメンタルイメージがあり、「じゃあ、うちの場合はどうしたらいいんだ?」「うちの会社には、違う型のメンタルイメージを持ったスタッフが複数いるんだが・・・」と感じられた方もいらっしゃるかもしれません。

例えば、英会話スクールのマネジメントする場合などは、同じ英語の先生といっても母国が違えば価値観も違います。

価値観が違えば、求められるリーダーシップの内容も異なるはずです。

どれか一つのメンタルイメージに合わせてマネジメントをするのは難しいかもしれません。かといって、スタッフごとにマネジメントの方法を変えることはできませんから、とても悩ましいところではあります。

そこで、必要になるのが、外国人スタッフの考え方や価値観を知ろうとするマネジメント側のリーダーシップの在り方です。

知ろうとする姿勢を持つことで、スタッフと上司の間に相互理解が生まれ、相互理解が信頼関係を育みます。信頼関係が生まれ外国人スタッフが上司の考えを知ろうとするきっかけになるでしょう。

価値観や考え方が違っても、同じ人間同士で個人と個人で互いの考え方をすり合わせていくのが、もっとも効率的な相互理解の方法なのかもしれません。

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